地域の皆様に、もっと親しまれるお酒を造り続けていきたい。
その想いを胸に、150年目を迎える博多百年蔵は、新たな一歩を踏み出しました。
博多に残る唯一の造り酒屋として
平成27年6月、当社は新しい醸造場“白壁蔵”の稼働を開始しました。
当社にとって、この蔵の建設は、「博多の地でこれからも地酒を造り続ける」ことへの決意の表明でもあります。
酒米を蒸す際に大量にでる水蒸気を逃がすための煙突が配され、前面は一面の漆喰が塗られた真っ白な蔵。
酒蔵としては小さな規模ですが、繊細な仕込温度管理を可能とするサーマルタンクや、冷房除湿機能を完備した上槽室(お酒を搾る部屋)等を備えた新しい蔵は、「小仕込」「通年醸造」「フレッシュローテーション」等の当社が目指す醸造場としてのスタイルを実現させる土台となってくれる場所と考えています。
フレッシュローテーション
しぼりたてのお酒には若い酒ならではのフルーティーな香りやフレッシュ感があります。
また、きちんとした管理の下で熟成を重ねたお酒には、時を経なければ出すことのできない、繊細かつふくよかな味わいが創り出されます。
どちらのお酒を目指すかは、各蔵元それぞれの考え方です。
当社はかつて日本酒の需要が落ち込んだ時期に想定以上の在庫をかかえた結果、適切な熟成の管理が難しくなる状況を経験しました。
このような経験をふまえて、また、小さな酒蔵として何ができるかを考えた末、現在では【小仕込】【通年醸造】により、常にフレッシュなお酒を提供していくこと【フレッシュローテーション】を第一に考え酒造りをおこなっています。
ある意味では「熟成の妙」を切り捨てた方針ではありますが、小さな酒蔵として、可能な限りお客様に満足いただける酒を提供しつづけるための方向性と考えています。
小仕込
1仕込に使う酒米の総量を800kg以内としています。
小さな単位での仕込みは、効率化とは反対の人手もコストもかかる造り方ですが、1つ1つの仕込みに対して繊細な温度管理が可能となり、その結果としてより喜んでいただける酒が醸せるものと考えています。
通年醸造
現在の博多百年蔵では、繊細な温度管理を可能とするサーマルタンクや、冷房除湿機能を完備した上槽室等の文明の利器の導入で、通年で日本酒の醸造に適した環境を維持することが可能となっています。
この環境の中で、小仕込を繰り返すことにより、フレッシュローテーションを実現しています。
全量槽しぼり
発酵を終えた醪(もろみ)を搾る作業は、昔から人出と時間のいる作業です。
今では通称「ヤブタ」とよばれる圧搾機械が多くの蔵元に導入されて、効率化がはかられていますが、当社にはその機械がありません。
小さな仕込みを繰り返す当社では、大きな機械は持て余してしまうだろうと考え、「酒袋」に醪を入れて搾る昔ながらの「槽しぼり」を続けています。
手間と時間がかかる選択ですが、愚直さが少しでもお酒の良さに反映されることを願って続けています。